当ページでは、インターネット上の投稿に対する削除請求について詳しく解説します。
インターネット上の投稿に関しては、基本的に全世界からアクセス可能であり、拡散も容易であることから、削除をご希望の場合は迅速な対応が重要となります。
お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。
また、インターネット上の誹謗中傷や風評被害にお悩みの方向けに、削除請求を含む被害者向けサービスの全体像をお示ししたページをご用意していますので、併せてご参照ください。
インターネット上の誹謗中傷・風評被害を受けられた被害者向けサービスはこちら
目次
削除請求について
インターネット上の誹謗中傷・風評投稿の多くは匿名なので、投稿者自身へ削除請求は通常困難です。
そこで、サイト管理者であるプロバイダを相手に削除請求を行います。
当ページでは、プロバイダを相手にした削除請求を前提に、どのような投稿であれば削除請求が認められるのか、削除請求の方法と所要期間、削除請求の流れ、法改正による影響を説明します。
どのような投稿であれば削除請求が認められる可能性があるのか?
当然ですが、どのような投稿でも削除請求が認められるわけではありません。投稿者にも表現の自由があるからです。
人格権などの一定の権利を侵害する投稿について、削除請求が認められています。
具体的には、別ページにて説明していますので、ご参照ください。
どのような投稿であれば削除・開示が認められる可能性があるか?についてはこちら
削除請求の方法・所要期間は?
削除請求の方法は、大きく分けて、裁判外の削除請求(任意の削除請求)と裁判上の削除請求の2種類があります。
裁判外の削除請求
裁判外の削除請求は、サイト管理者に直接削除を求めるものです。
削除するかどうかの判断をするのはサイト管理者です。
このため、削除の成否は、サイト管理者の方針や考え方に左右されやすいといえます。
他方、サイト管理者が定めている利用規約やガイドラインといった投稿ルールに反することを指摘することで、削除を促すことが可能です。
裁判外の請求は、さらにオンライン請求と書面請求の2つに分けられます。
オンライン請求(削除依頼フォームやメール)
サイトの削除依頼フォームや指定メールアドレスへのメールにより請求します。
サイトによって、複数の請求ルートが存在したり、詳細に削除を求める理由が記載できなかったり、削除依頼内容が公開されたりするなど、方針が異なります。
このため各サイトの特徴を把握した上で対応する必要があります。
所要期間は、基本的に1日から数週間ほどです。
プロバイダ責任制限法の改正による影響は当ページ「プロバイダ責任制限法の改正で変わること・変わらないこと」をご参照ください。
書面請求(送信防止措置依頼書)
プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト(※)にて公表されている「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」をプロバイダに郵送して請求します。
サイトによって、アレンジした送信防止措置依頼書を用意していることがあり、また、送信防止措置依頼書に添付する書類の指定内容が異なるため、注意が必要です。
送信防止措置依頼書の郵送後、プロバイダは、投稿者と連絡が取ることができる場合は、多くの場合、投稿者に対し、削除に同意するかどうか意見を聴きます。
プロバイダは、送信防止措置依頼書、添付資料、投稿者の意見等から、削除するかどうかを判断します。
なお、投稿者の意見を聴く場合、7日以内に投稿者から反論がなければ、削除されることが多いです。
所要期間は、基本的に1か月ほどです。
裁判上の削除請求
裁判上の削除請求は、裁判所に訴状や申立書を提出するものです。
削除するかどうかの判断をするのは裁判所です。
裁判所が中立的な立場から判断します。
ただし、削除請求の根拠は、法律上・判例上削除が認められるような権利侵害に限られ、サイト管理者が定めている利用規約やガイドラインといった投稿ルールに反することを理由にはできません。
裁判外の請求は、さらに仮処分手続と訴訟手続の2つに分けられます。
削除仮処分
仮処分とは、民事保全法で定められた裁判所の命令です。削除仮処分は、削除請求権について、被害者の方に「生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」に発令されます。
「仮」という名のとおり、本来は、その後本案訴訟(公開の裁判)で最終的な結果が出るまでの暫定的な命令です。
ただ、実務上、削除仮処分については、プロバイダは仮処分命令に従って投稿の削除を行ない、仮処分が出た後の本案訴訟(削除訴訟)至らないのが通常です。
本案訴訟と比較して
- 手続の進行が迅速
- 手続が非公開
- 立証の程度が疏明で良い
- 削除請求を多く扱う裁判所の担当が期待できる
- 執行の申立てが迅速にできる
というメリットがあるため、
- 「生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」という要件が追加される
というデメリットを考慮しても、本案訴訟よりも仮処分を選ぶことがほとんどです。
仮処分手続では、裁判所に対し、削除請求権(⊃権利侵害)があること、「生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」に必要であることを主張し、根拠資料を提出します。
所要期間は、基本的に2週間から数ヶ月ほどです。
削除訴訟
削除訴訟は、通常の民事訴訟で削除判決の得を目指すものです。
仮処分と比較すると以下の特徴があります。
- 手続の進行が比較的遅い
- 手続が公開(例えば、原則として、裁判記録は誰でも閲覧可能です。)
- 立証の程度が証明
- 必ずしも削除請求に慣れた裁判所へ配点されない
- 判決があってもしばらく執行の申立てができない
このため、「生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」という要件を満たさないと考えうるケース(名誉毀損的な表現を認識しながら長年放置して実害もほとんど想定されないようなケースなど)以外では、削除訴訟を選択することはありません。
所要期間は、基本的に半年から場合によっては1年以上かかることもあります。
削除請求はどのような流れで行うのがよいか?
基本的には、①裁判外の請求②裁判上の請求の流れが考えられます。ただし、投稿内容、プロバイダ(サイト管理者)の性質・方針、ご予算によってケースバイケースです。
例えば、削除に際して必ず仮処分命令を求めるサイトについては、仮処分を選択せざるを得ません。
投稿者の特定・投稿者への損害賠償請求をお考えの場合
投稿者の特定(発信者情報開示請求)・投稿者への損害賠償請求をお考えの場合、最低限、投稿の証拠化を済ませてから請求しなければなりません。
発信者情報開示請求では、請求者側で投稿を特定し、かつその証拠を添付しなければならないからです。
プロバイダ責任制限法の改正で変わること・変わらないこと
2024年5月17日、プロバイダ責任制限法の改正法である情報流通プラットフォーム対処法が公布されました(実際に施行されるのは、2024年5月17日から1年以内です)。
これにより、一部の大規模なSNSや掲示板において、削除請求について、体制整備や運用が義務付けられます。
情報流通プラットフォーム対処法で変わること
一部の大規模なSNSや掲示板において、以下のような体制整備・運用が義務付けられます。
- 分かりやすい場所への、十分な説明が記載できるような、日本語対応のオンライン窓口の設置
- 受付日時の明示
- 専門的な知識経験を有する侵害情報調査専門員の選任
- 14日以内(総務省開催の研究会では一週間が適当とされています。)の結果の通知
- 期限に間に合わない場合の理由の通知
- 削除しなかった場合の理由の通知
このため、適用される大規模なSNSや掲示板では、裁判外の削除請求手続の迅速化や、請求後の運用状況・削除されない場合の理由の明確化が期待できます。
また、オンライン請求がメインになるでしょう。
情報流通プラットフォーム対処法で変わらないこと
全てのSNSや掲示板に適用されるわけではない
情報流通プラットフォーム対処法で体制整備・運用が義務付けられるのは、今後指定される一部の大規模なSNSや掲示板に限られます。
指定されなかったSNSや掲示板に関しては、体制や運用への影響を受けず、従来通りの対応となる可能性が高いでしょう。
削除されやすくなるわけではない
法的な削除の要件が変わるわけではないため、基本的には、今まで削除されなかった投稿が削除されるようになるわけではありません。
裁判上の請求は変わらない
情報流通プラットフォーム対処法で変わるのは、一部の大規模なSNSや掲示板における体制・運用であり、裁判上の請求については何ら変更がありません。
従来通り、仮処分(や訴訟)を利用していくこととなります。
お気軽にお問い合わせください。
どのような手段で削除請求すべきかはケースバイケースです。
お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。