当ページでは、インターネット上の投稿に対する慰謝料等請求について解説します。
また、インターネット上の誹謗中傷や風評被害にお悩みの方向けに、発信者情報開示請求(投稿者の特定)を含む被害者向けサービスの全体像をお示ししたページをご用意していますので、併せてご参照ください。
インターネット上の誹謗中傷・風評被害を受けられた被害者向けサービスはこちら
目次
慰謝料等請求について
インターネット上の投稿により名誉権やプライバシーなどの権利・利益を侵害された場合は、投稿者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料等請求)が可能です。
当ページでは、慰謝料等請求の方法、発信者情報開示請求で特定した人が投稿者でないこともあり得ること、賠償金額について説明します。
どうやって請求するのか?
慰謝料等請求の方法は、裁判外の請求(交渉)と裁判上の請求(裁判)があります。
裁判外の請求(交渉)
裁判外の請求(交渉)は、請求書を内容証明郵便(いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを後から立証できる郵便)などで郵送することからはじまります。
当事者間で交渉を行い、合意に至れば、示談書を取り交わして示談となります。合意に至らない場合は、裁判上の請求に移るかどうかを検討します。
裁判外の請求(交渉)は、裁判上の請求に比べて、早期解決が期待できます。また、裁判上の請求と異なり、原則公開されるということもありません。
裁判上の請求(訴訟)
裁判上の請求(訴訟)は、訴状を裁判所に提出することからはじまります。
当事者が主張立証し合って、裁判所が請求を認めるか否か、認める場合はいくら認めるのかを判断します(判決)。
判決に向けて審理が進みますが、途中で裁判所が和解を進めることがあります(裁判上の和解)。
裁判上の請求(訴訟)に関しては、原則として公開であること(裁判記録は原則誰でも閲覧可能です。)、基本的に時間がかかること(数か月、場合によっては1年以上も想定されます。)が特徴です。
投稿者=発信者情報開示で特定した人?
裁判外の請求も、裁判上の請求も、投稿者の氏名・住所がわからなければできません。
発信者情報開示請求でプロバイダから開示された発信者情報から特定できる氏名・住所は、
- 投稿がされたサイトのアカウントに登録された氏名・住所
- 投稿がされたサイトのアカウントに登録された電話番号又はメールアドレスの契約者の氏名・住所
- 投稿の通信を経由したアクセスプロバイダ(回線)の契約者の氏名・住所
であり、投稿者である可能性が高いといえます。
ただし、③に関しては、同居の家族が投稿した場合もあります。
また、①~③いずれも、アカウントが乗っ取られたことを理由に、投稿者であることを否定される場合もあります。
これらのような場合は、契約者側に具体的な反論(同居の家族のうち誰が投稿したのか、アカウント乗っ取りをうかがわせる事情など)を求めるなど、臨機応変に対応する必要があります。
賠償金額について
裁判外の請求も裁判上の請求も、請求側が最初の請求額を決める必要があります。
最初の請求額については、投稿内容、具体的な被害、投稿者の特定費用、裁判例などを考慮して決めることとなります。
慰謝料額の裁判例の傾向は?
裁判例から、最終的に判決に至った場合に認められ得る額を詳細に予想するのは難しく、かなり概括的な予想にならざるを得ません。
判決では投稿内容をはじめ様々な事情が考慮されており、全く同じ事情の事件は想定し辛いからです。
ただ、名誉権を侵害する投稿が原因で認められる損害賠償額は、裁判例からすると100万円以上は少なく、50万円以下が多い印象です。
これとは別に、弁護士費用や投稿者の特定にかかった弁護士費用として加算される金額については、裁判所の判断が分かれており、慰謝料以上に予想が難しいです。こちらを参照ください。
裁判外の請求(交渉)では
裁判外の請求では、裁判になった場合のお互いの金銭的・時間的・精神的負担も考慮事項になり得ます。
裁判外の請求を行い交渉の段階に入ると、投稿者側の事情(支払能力や弁護士の有無など)も一定程度明らかになる可能性があります。
裁判外の請求では、これらを踏まえて具体的な金額を協議することになります。
金銭の支払いだけでなく、謝罪文の交付や、二度と同様の投稿を行わない約束や、同様の投稿をした場合の違約金などの取り決めを行うこともあります。
裁判上の請求(訴訟)では
裁判上の請求では、最初の請求額に応じて手数料(収入印紙代)が高くなります。このため、あまり裁判例の傾向から離れ過ぎた金額(1000万円以上など)を最初の請求額とすると、手数料の一部が無駄になるリスクがあります。
裁判上の請求で特に問題となるのは、損害(因果関係)と投稿者の特定費用です。
損害(因果関係)について
投稿によって売上が減少したことや、キャンセルが相次いだことなどを理由に、本来得られた利益分を請求することが考えられますが、投稿との因果関係の立証が難しく、残念ながら認められる例は少ないです。
このため、主に、具体的な算定ができない損害(個人の場合は「慰謝料」、法人の場合は「無形の損害」と呼ばれています。)を裁判所に判断してもらうこととなります。この判断では、証拠上認められる諸々の事情が考慮されます。
弁護士費用、投稿者の特定費用について
裁判上の請求では、認められた慰謝料等の額の10%が、その裁判の弁護士費用分として加算されるのが一般的です。
これに加え、投稿者の特定にかかった弁護士費用を含む費用については、裁判所の判断が割れているところです。
実費全額を認める判断もあれば、一部のみ認める判断もあります。
投稿者の特定費用が(いくら)加算されるか予測することは困難ですので、請求側としては、投稿者の特定費用を明確にして投稿との因果関係を立証できるようにするなど、少しでも加算される可能性を上げることが重要です。
「慰謝料等はどのくらい支払ってもらえますか?」というご質問について
よくある質問の「慰謝料等はどのくらい支払ってもらえますか?」 をご参照ください。
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慰謝料等請求では、交渉・裁判いずれについても柔軟な対応が必要です。
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