当ページでは、インターネット上の炎上対策について詳しく解説します。
また、インターネット上の誹謗中傷や風評被害にお悩みの方向けに、被害者向けサービスの全体像をお示ししたページをご用意していますので、併せてご参照ください。
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炎上とは
スマートフォンの普及やSNSの流行に伴い、「炎上」という言葉を目にすることが多くなりました。
「炎上」という言葉に明確な定義はありませんが、事例を観察すると、おおむね、インターネットにおいて、特定の対象に対して、短時間で、不特定多数から批判的なコメント(バッシング)が行われている状態などを指す表現と理解できます。
以下、実際に起こった炎上事例を照会したうえで、炎上の進み方、炎上によるリスクについて触れ、炎上の予防と対処の方法について説明します。
炎上事例
実際に起こった炎上事例として、4つ紹介します。
【事例1】従業員による職場における不適切な動画投稿
ある外食チェーンのアルバイト店員が、店内で氷を投げ、調理器具を不適切に使用した動画を撮影し、SNSで公開したところ拡散・炎上し、運営会社は謝罪に追い込まれました。
いわゆるバイトテロといわれている事例です。
このような事例では、関係者の個人情報がインターネット上で特定されてしまうことがあります。
【事例2】商品への異物混入をSNSで告発
ある食品メーカーの商品に虫が混入していたとして、消費者がSNSで画像を公開したところ、拡散され、メーカーが炎上しました。この事例では、投稿者がメーカーから受けた対応の様子についても投稿され、反響が続きました。
【事例3】公式アカウントでの誤爆?
ある旅行サイトの公式アカウントで、突然、ある歌手の方の投稿への返信として、容姿を揶揄する内容の投稿がされました。この投稿はすぐに削除されましたが、キャプチャ画像が拡散され炎上しました。後に、この公式アカウントから謝罪の投稿がされています。
この事例は、公式アカウントの運営担当者がプライベートのアカウントと間違えて投稿してしまったと推測されています。
【事例4】公式アカウントでの不適切な投稿
世界的に著名なキャラクターを扱う日本法人の公式アカウントで「なんでもない日おめでとう」という投稿がされましたが、投稿日が8月9日(長崎に原爆が投下された日)であったため、非難が殺到し炎上しました。同法人は、同日中にこの投稿を削除し、謝罪の投稿をしました。
炎上はどのように進むのか
事例によれば、炎上は、以下のように進むことが多いようです。
- インターネット上の投稿など、対象者の投稿や行動がSNSや掲示板で問題視され、不特定多数から批判的なコメントが行われる
- (【事例1】のような一般人による投稿の場合)対象者について、過去の投稿、実名、所属先など個人情報などが特定され、「まとめサイト」などに掲載される
- 投稿者の所属先、投稿元の企業、これらの取引先に電話で抗議するなど、ネットに留まらない行動が始まる
- 大手メディアを含む各種メディアで報道される
- SNSや掲示板で更に拡散される
必ずしも全てのプロセスに至るわけではありませんが、対象者が著名人や有名企業の場合は、ニュースとしての価値が高いため、4以降まで至りやすいようです。
炎上によるレピュテーションリスク
炎上は、一旦発生すると、SNSやまとめサイトなどを通じて瞬く間に広がるため、対象者にとって深刻なレピュテーションリスクとなり、場合によっては株価にも大きな影響を与えることもあり得ます。
例えば、ある小売店を営む企業が、ご高齢の方と高額のサポート契約を結び、解約しようとした家族に20万円もの解約料を請求したことがSNS上で投稿され、各種メディアに取り上げられるなど炎上し、直後に株価が大幅に下落したという事例があります。
また、大手メディアにまで取り上げられると、ネットにあまり触れない人々にも情報が届き、その影響範囲はさらに拡大します。
さらに、インターネット上で拡散された情報は完全に削除するのは不可能と言われており(デジタルタトゥー)、対象者のレピュテーションに長期間にわたり悪影響を与えることがあります。
炎上の予防と対処の重要性
企業がマーケティングのためにSNSを活用することは増えています。
また、会社としては、従業員のプライベートにおけるSNS利用まで禁止するのは困難です。
したがって、上記のようなレピュテーションリスクを低減するため、炎上の予防と炎上が生じた場合の対処が重要となります。
炎上の予防
火種を早期に察知できる体制を整える
火種を早期に察知し対処することで、デマや憶測による情報の拡散を防止し、炎上の拡大を抑えられる可能性が高まります。
方法としては、SNSの検索ツールなどを利用した監視体制の整備や、SNS監視サービスの利用が考えられます。
従業員の投稿による炎上を予防する
【事例1】のような炎上を予防するためには、従業員が不適切な投稿をしないように意識付けをするしかありません。
従業員のSNSの利用に関し、就業規則などのルールやガイドラインの整備を行ったうえで、誓約書の提出や研修などによる意識付けを行うことが考えられます。
就業規則の追加
就業規則では、貸与電子機器の利用ルールや、就業時間中の個人アカウントでのSNS利用禁止、秘密保持義務、これらの違反が懲戒事由になることなどを追加します。
なお、就業規則において、従業員のプライベートにおけるSNS利用まで禁止することは、合理性を欠くものとして、無効となる可能性が高いと考えられます。
SNSの利用に関するガイドラインの整備
就業規則の範囲外となるプライベートにおけるSNSの利用は、上記のとおり、禁止したり、制限したりすることは困難です。
しかし、従業員は、必ずしもSNSに関する教育がされているとは限らないため、プライベートにおけるSNSの利用に禁止や制限をかけられないからといって、対策をしないというのはリスクがあります。
このため、SNSに関する一定の知識の共有や、一定の指針を示すことを目的に、ガイドラインを整備しておくことが有効です。
内容としては、SNSの特性(投稿は全世界に公開されうるものであること、拡散が容易であること、永久的に残りうることなど)、投稿内容の注意点、従業員の投稿による炎上事例、従業員の投稿が炎上した場合の報告・相談窓口の案内などが考えられます。
SNSの利用に関する研修・教育・誓約書の提出
就業規則やガイドラインを整備しても、従業員に理解してもらえなければ意識付けはできません。
これらをもとに、従業員への研修・教育を行ったり、SNSの利用に関する誓約書の提出を促したりすることで、できる限り周知することが重要です。
公式アカウントの投稿による炎上を予防する
公式アカウントを運営している場合は、【事例3】及び【事例4】のように、公式アカウントによる炎上もあり得ます。
公式アカウントの投稿は、業務として行うことがほとんどと思われ、事前に公式アカウント運用ルールを整備することにより、プライベートにおけるSNS利用に比べて、ある程度コントロールが効きやすいといえます。
以下、事例を踏まえて、炎上を防ぐために特に設けたいルールについて説明します。
公式アカウントによる誤爆を防ぐルール
【事例3】は、公式アカウントの運営担当者がプライベートのアカウントと間違えて投稿してしまったと推測されています。
このような誤爆が疑われる事例は、他にもたびたび起こっています。
これを防ぐためには、公式アカウントを運用する端末は貸与電子機器のみとするというルールを設け、貸与電子機器において個人アカウントでのSNSの利用禁止ルールと合わせて、アカウントの混同を防ぐことが考えられます。
より厳格に運用するのであれば、公式アカウント運用専用の電子機器を用意するという方法も考えられます。
公式アカウントによる不適切な投稿を防ぐルール
【事例4】は、公式アカウントの運営担当者が投稿日を見誤って不適切な投稿してしまい、炎上したと思われる事例です。
このような炎上を防ぐためには、①公式アカウントによる情報発信の方針を定め、②炎上しやすいテーマや炎上が起きやすいタイミングを避けるように促し、③不適切な内容とならないように注意喚起し、④不適切な投稿にならないようなチェック体制を整えるようなルールを整備することが重要です。
- 公式アカウントとして投稿する内容について、新商品やキャンペーン告知などのプロモーションに限るのか、それとも、いわゆる「ゆるい」投稿も行うのかなど、方針を定めます。
- 炎上しやすいテーマとしては、宗教関係、男女関係、政治関係、戦争関係、社会保障関係などが挙げられます。炎上が起きやすいタイミングとしては大きな災害や事件が起こった日などが挙げられます。
- 投稿内容について、例えば、著作権など第三者の権利を侵害しないこと、新商品やキャンペーン告知などのプロモーションに関しては景品表示法、不正競争防止法などの広告規制違反とならないことについて注意喚起をすることが考えられます。
- 投稿に際し、以上のようなルール違反になっていないか、複数の目でチェックする体制を整えた方が無難と考えられます。Wチェック体制とするのか、決裁を必要とするのか(どこまでの決裁を必要とするのか)など、公式アカウントの運用方針に合わせて、ルールを定めておくとよいでしょう。
炎上への対処
上記の予防策を講じていたとしても、SNSが人の手で運用される以上、炎上を100%防ぐことはできません。
このため、炎上が起こってしまった場合の対処法も検討しておく必要があります。
炎上対応のプロセス
SNSの検索ツールやSNS監視サービスなどにより、火種(炎上)を察知したら、まずは事実関係を確認します。
事実関係を把握したら、火種となっている批判等の内容と照合し対応方針を決め、実行します。
公式アカウントの投稿が火種の場合は、通常の投稿は一時停止しましょう。
これらを迅速に行わなければ、公表や対応のタイミングを逃して、誠実さに疑念を抱かれ、更なる炎上を招くおそれがあります。
事実関係の把握に時間がかかる場合であっても、その旨を公表し、一定の謝罪をするなど、誠実な対応を心掛ける必要があります。
対応方針の種類
対応は、大きく分けて次の3つに分類できます。
影響が小さいと判断できる場合:静観する
炎上によるレピュテーションへの影響が小さいと判断できれば、一旦は静観することも選択肢です。
判断要素としては、一般的には、例えば、炎上の原因となった投稿が、人の命や健康にかかわる内容でないかどうか、第三者の権利を侵害するなどの違法行為といいうる内容でないかが重要となりますが、事業内容や事業規模によって、考慮すべき点が変わってくるため、注意が必要です。
一旦は静観する方針を採ったとしても、その後の状況次第で別の対応への移行を検討するなど、柔軟な対応が求められます。
批判が明らかに妥当でない場合:主張を貫く
批判が事実誤認に基づくなど明らかに妥当でない場合は、事実を公表して主張を貫くことを検討します。
ただし、この方針は、火に油を注ぐ結果になりかねないため、公表する事実関係や表現の仕方などを慎重に検討する必要があります。
企業・従業員に非がある場合:迅速に謝罪する
企業側に非があることが判明した場合は、迅速に謝罪をしたうえで、その時点で明らかになっている範囲で事実確認の結果を公表し、問題点を明確に述べ、可能であれば今後の対応や方針を述べます。
公式アカウントによる炎上の場合は、投稿の削除を検討します。
謝罪の注意点
謝罪の際は、以下の点を明確にする必要があります。
- 謝罪の相手方
- 謝罪対象となる行為
- 謝罪理由
- 対処内容、今後の対応や方針
上記のうち③の「対処内容」については、不祥事であれば、関係者の懲戒処分の結果が考えられます。
しかし、無理に謝罪のタイミングに関係者処分の発表合わせようとすると、懲戒処分に必要な事実関係の把握が疎かになり、場合によっては懲戒処分が無効になりかねないため、「関係者の処分を検討している」などと「方針」のみを示すという選択肢も視野に入れます。
いずれにせよ、明らかになった事実関係のみに基づき、誠意のある対応と謝罪を行うことが重要です。
炎上の原因となった投稿やアカウントの扱いについて
従業員の投稿による炎上の場合
従業員に非がある場合は炎上の原因となった投稿だけでなく、可能な限り他の投稿についても、企業側で証拠化したうえで、アカウントそのもの(別アカウントを含む)の削除を要請します。
投稿の証拠化は従業員への責任追及のため、アカウントの削除は過去の投稿内容などから更に炎上が拡大することを防止するためです。
公式アカウントの投稿による炎上の場合
投稿の削除を検討します。
アカウントについては、説明責任を果たす重要なツールになるため、削除すべきではありません(逆に、削除した場合、「逃げた」などの新たな批判になる可能性があります。)。
事後の対応
従業員の投稿による炎上の場合
従業員に非がある場合は、従業員への懲戒処分、民事上、刑事告訴(業務妨害罪など)を検討します。
公式アカウントによる炎上の場合
炎上の原因になったデマ投稿や、炎上に乗じた誹謗中傷等については、投稿削除請求や、投稿者の特定ないし投稿者への責任追及を検討します。
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炎上対応は時間との勝負です。
また、従業員や誹謗中傷などに対する法的措置は弁護士による対応がスムーズです。
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