当ページでは、プロバイダからインターネット上の投稿に関し意見照会を受けた場合について詳しく解説します。
意見照会には、通常、期限が設けられています。
期限内に回答をしない場合、投稿者側に有利な事情をプロバイダや裁判所に示すことができないなど、投稿者にとって不利益になる可能性があります。
このため、迅速な対応が重要となります。
お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。
また、意見照会(開示請求)・慰謝料請求を受けた方(投稿者)向けに、投稿者向けサービスの全体像をお示ししたページをご用意していますので、併せてご参照ください。
意見照会(開示請求)・慰謝料等請求を受けた方(投稿者)向けサービスはこちら
意見照会とは
意見照会は、発信者情報開示請求を受けたプロバイダが、投稿者に対し、開示請求に応じるかどうかの意見(応じるべきでないという意見の場合はその理由を含む)を聴く手続きです。
「何が起こっているのか」「これからどうなるのか」などについては、以下のリンクで詳しく解説していますので、ご参照ください。
意見照会(開示請求)・慰謝料請求を受けた方(投稿者)向けサービスはこちら
当ページでは、意見照会が届いた場合の具体的な対応について説明します。
意見照会が届いたら確認すること
意見照会が郵送、メールなどで届いたら、状況を正確に把握するために、意見照会書を十分確認しなければなりません。
以下、ポイントを説明します。
回答期限は?(いつ届いたか?)
意見照会には通常回答期限が設定されています。
回答期限を過ぎてしまうと、プロバイダが、投稿者側の言い分を踏まえて方針を決定するかどうか不透明になります。
回答期限までに回答できるように、回答期限は必ず確認します。
「本照会書受領日から二週間以内に」などと、受領日基準で期限が設定されている場合も多く、この場合は、いつ届いたかを確認する必要があります。
どこから届いたか?どのような情報が開示請求されているか?
意見照会の送付元プロバイダや、開示が求められている情報を確認することで、特定がどこまで進んでいるか、現状を把握することができます。
送付元がサイト管理者(コンテンツプロバイダ)の場合
送付元がサイト管理者の場合、開示が求められている情報を確認します。
開示を求められているのが、氏名住所であれば、登録情報次第で個人が特定されるおそれがあります。
逆に、氏名住所以外の情報の場合は、ただちに個人が特定されるわけではありません。
(SMS)電話番号とメールアドレスの場合は、開示されると、弁護士法上の弁護士会照会という制度によって、電話番号のキャリア(ドコモ・ソフトバンク・auなど)や、メールアドレスを扱うプロバイダから契約者情報が開示される可能性があります。
(SMS)電話番号とメールアドレス以外の場合は、開示されると、当該情報をもとに、通信を経由したプロバイダ(アクセスプロバイダ)が特定され、氏名住所等の発信者情報開示請求がされることとなります。この場合は、後に、アクセスプロバイダから意見照会がされる可能性が高いです。
ただし、発信者情報開示請求が認められるのは、プロバイダが保有している情報のみです。
氏名・住所・電話番号・メールアドレスについては、サイト管理者やメールアドレスを扱うプロバイダの登録情報を確認し、どのような情報が開示されうるのか把握しておきましょう。
送付元がインターネット接続サービス提供者(アクセスプロバイダ)の場合
送付元がインターネット接続サービス提供者の場合、氏名住所を保有しているのが通常であり、発信者情報開示請求が認められれば、個人が特定されてしまうこととなります。
対象となっている投稿についての確認事項
対象となっている投稿について、意見照会の回答(反論)内容に関わるため、以下の事項を確認します。
- どこに書き込まれた、どのような投稿であるか
- 自分が投稿したものか
- 投稿の意味はどのようなものか
- どのような経緯で投稿したか
- 投稿の根拠となる証拠があるか
自分が投稿したものか確認するのは、 仮に自分が投稿したものではない場合、家族が投稿したなどの事情があり得ますが、真の投稿者が分かれば、③④⑤を確認する必要があるからです。
なお、自分が投稿したものではなく、かつ投稿者不明であっても、このこと自体は発信者情報開示を拒む理由にはなりません。電子機器の乗っ取りや、なりすましなどの可能性を示す具体的な事情があれば、慰謝料請求に至った段階で反論材料となる可能性があります。
意見照会の対応方針の検討
現状を把握したところで、対応方針の検討を行います。
以下、意見照会の対応方針を検討するうえで知っておきたいことを説明したうえで、原則として不同意のうえ反論すべきであること、例外的に同意する場合について説明します。
意見照会への対応にどのような意味があるのかについては、こちらで解説していますのでご参照ください。
発信者情報開示請求の相手方はあくまでプロバイダ
発信者情報開示請求は、投稿者の特定の手段であり、意見照会の時点では、プロバイダが請求を受けて対応しています。
裁判外の請求の場合は、プロバイダ自身が開示をするかどうかを判断します。
裁判上の請求の場合は、裁判所が開示請求を認めるかどうかを判断しますが、開示すべきでないとの反論はプロバイダが行うこととなります。
プロバイダは投稿の事情がわからない
通信を経由しただけのアクセスプロバイダはもちろん、サイト管理者であっても、投稿の事情(投稿の経緯、投稿内容の真実性などの事実関係)はわからないのが通常です。
プロバイダが独自に調査することもあるかもしれませんが、調査の有無・程度は、あくまでプロバイダの方針次第です。
このため、意見照会の回答で反論をしなければ、プロバイダは、開示請求者側の言い分のみで開示に応じるかどうかを判断する可能性があり(裁判外の請求の場合)、また、有力な反論をすることができない可能性があります(裁判上の請求の場合)。
発信者情報開示は要件が厳しい(慰謝料請求との違い)
発信者情報開示請求が認められるための要件に、「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」という要件があります(プロバイダ責任制限法5条1項)。
慰謝料請求においても、「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」という要件がありますが(民法709条)、発信者情報開示請求と異なり、「明らか」という要件はありません。
つまり、権利侵害についていえば、慰謝料請求よりも、発信者情報開示請求の方が認められるためのハードルの方が高いといえます。
裁判外の請求ではプロバイダは開示しない方が低リスク
プロバイダは、開示しなかった場合は開示請求者から、開示した場合は投稿者から、それぞれ損害賠償請求を受け得る立場です。
ただ、開示しなかった場合は原則として免責されます。開示した場合の免責規定はありません。
このため、一般的に、プロバイダは、開示しない方が低リスクといえます。
原則、不同意のうえ反論すべき
発信者情報開示のハードルの高さやプロバイダのリスクを考えると、意見照会の回答では、不同意としたうえで、開示請求者側の言い分に対する的確な反論を記載することで、プロバイダの開示拒否や、裁判所の却下・棄却を狙うのが合理的といえます。
開示がされなければ、慰謝料請求がされることも通常はありません。
例外的に同意する場合
投稿内容、投稿に関する事情や裁判例等に照らし、発信者情報開示が認められる可能性が相当程度高いと判断せざるを得ない場合は、同意してしまった方が早期解決につながります。
そのような場合以外についても、以下のようなメリットを考慮して例外的に同意するかどうかを判断することになります。
- 請求者において、投稿者の特定に必要な弁護士費用が減少し、投稿者に対する損害賠償額も減少する可能性がある。
- 被害感情が和らぐ可能性がある。
①については、例えば、裁判上の開示請求に至っていなければ(まだ裁判外の開示請求であれば)、開示請求者側にかかる費用が減少する可能性が高くなると思われます。裁判上の開示請求に至ると、その時点で別途弁護士費用がかかるのが通常だからです。
②については、慰謝料請求額が低くなる可能性につながりますが、完全に開示請求者ご本人次第です。
反論の方針について(名誉権侵害を例に)
開示不同意のうえ反論をする場合は、発信者情報開示請求の要件を満たさないことを主張することになります。
基本的には、権利侵害が「明らか」であるとはいえないと反論をすることになり、これ以外の要件が問題になることは少ないと思われます。
以下、発信者情報開示請求において代表的な権利である名誉権侵害を例に、ありうる反論を説明します(個々の事例でこれらの反論が認められるとは限りません。)。
名誉権侵害が「明らか」というための要件は、複雑ですが以下のとおりです。
- 対象投稿の流通により開示請求者の社会的評価が低下すること(「開示請求者に対する表現であると同定できること(同定可能性)」を含む)
- 以下のいずれかを満たすこと
- 対象投稿が公共の利害に関する事実にかかるものでないこと
- 対象投稿が、公益を図る目的でされたものではないこと
- 以下のどちらか
- (事実の摘示による名誉権侵害の場合)対象投稿の摘示事実の重要部分が真実でないこと
- (意見論評による名誉権侵害の場合)対象投稿の意見論評の前提事実の重要部分が真実でなく、かつ、意見論評が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものであること
投稿者側としては、1を満たさない場合、2.1と2.2と2.3.1の全て満たさない場合、2.1と2.2と2.3.2を全て満たさない場合のいずれかの場合であること必要なため、例えば、以下のような反論ができないか検討することとなります。
- 対象投稿の記載では開示請求者のことを言っているかわからない(要件1を満たさない)
- 対象投稿は個人の感想に過ぎず、社会的評価を低下させるに至らない(要件1を満たさない)
- 対象投稿の内容は、公共の利害に関する事実にかかるものであり、公益を図る目的で投稿され、かつ、摘示事実の重要部分について真実でないとはいえない(2.1と2.2と2.3.1の全てを満たさない)
③の反論をする場合は、投稿内容の真実性を裏付ける証拠が重要であり、客観的な証拠があれば、開示されない可能性が高まります。
意見照会後について
意見照会に回答した後については、こちらをご参照ください。
お気軽にお問い合わせください
意見照会には、通常は期限が設けられており、お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。当職は、プロバイダの立場で数多くの案件に対応した経験を活かし、最善と考える方針や回答を提案いたします。
是非お気軽にお問い合わせください。