弁護士 冨田 昂志
奈良弁護士会所属
この記事の執筆者:弁護士 冨田 昂志
裁判所職員として多くの裁判手続に携わる。 国内大手IT企業の社内弁護士として誹謗中傷などの権利侵害に対応し、裁判案件については100件以上を担当。 情報流通プラットフォーム対処法(プロバイダ責任制限法)の法改正対応にも関わる。
当ページでは、インターネット上の誹謗中傷や風評被害にお悩みの方へ、被害の特徴を詳しく解説し、具体的な救済手段をご案内します。
いずれの手段も、迅速な対応が重要となる場合が多いです。
当ページでは、ご判断のための情報をご案内していますが、お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。
【重要】
投稿者の特定・責任追及を少しでもお考えの場合は、今すぐ、投稿を証拠化しましょう。
証拠化の方法はこちら
目次
インターネット上の誹謗中傷・風評被害の特徴とリスク
救済方法を解説する前提として、インターネット上の投稿や誹謗中傷・風評被害の特徴を解説いたします。
誰でも簡単に投稿ができる
インターネット上では、匿名掲示板、SNSなどのプラットフォームを通じて、誰でも簡単に情報発信ができます。
総務省「令和5年版 情報通信白書」(※)によれば、日本国内のインターネット利用率(個人)は2022年で84.9%とのことなので、国内人口の8割以上が自由に情報発信できる計算になります。
すなわち、現代社会は、インターネット上で誰でも簡単に誹謗中傷や風評被害に繋がる情報を発信できる時代なのです。
※https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/pdf/index.html
拡散が容易である
インターネット上では、例えば以下の手段により、容易に特定の投稿内容を拡散できます。
- コピーアンドペースト機能
- 画像の保存及び添付機能
- スクリーンショット機能
- リンクの掲載機能
- SNSの機能(Xのリポストや引用リポスト)
「誰でも簡単に情報発信できる」現代社会では、誰でも簡単に投稿内容の拡散ができるといえます。誹謗中傷・風評が拡散されると、削除が困難になり、被害も甚大になりかねません。
このため、インターネット上の誹謗中傷・風評被害については、迅速な投稿削除などの対応が必要になります。
多くの場合は匿名投稿である
匿名掲示板やSNSの多くは匿名で投稿が可能です。インターネット上の誹謗中傷を含む問題投稿の多くは匿名で行われます。投稿削除させたくても、慰謝料などの責任を追及したくても、誰が投稿者なのか分からないのが現状です。
ただし、法律上は匿名投稿にも対処可能です。裁判実務上、サイト管理者などのプロバイダに対して、名誉毀損(人格権侵害)などに基づく投稿削除請求が認められており、法律(※)に基づき投稿者の発信者情報開示請求が可能です。
※プロバイダ責任制限法(今後、「情報流通プラットフォーム対処法」に名称が変わる予定です。)。
永久的に残りうる
投稿は、サイト管理者や投稿者自身によって削除されない限り、インターネット上に残り続けます。投稿の公開範囲によっては、世界中からアクセス可能なまま残り続けることとなります。
SNSの利用規約に反する投稿は、サイト管理者の自主的なパトロールなどによって削除されることもありますが、基本的には、被害者が積極的に投稿削除請求をする必要があります。
プロバイダの存在
インターネット上の誹謗中傷・風評被害の関係者は、被害者と投稿者だけではありません。サイト管理者であるコンテンツプロバイダ(X、Google、Metaなど)、開示請求に関してはインターネット接続サービスを提供するアクセスプロバイダ(NTTドコモ、KDDIなど)といったプロバイダも関係者です。
これは、前記のとおり、インターネット上の誹謗中傷・風評投稿の多くが匿名で行われ、投稿の削除権限や、投稿者の情報を持っている可能性のあるプロバイダを関係者とせざるを得ない状況だからです。
プロバイダによって投稿削除や投稿者特定の難易度が変わるため、各社の方針の把握が重要です。
誹謗中傷・風評被害の救済手段
インターネット上の誹謗中傷・風評被害を受けてしまった場合、法律上の救済手段としては、大きく分けて、投稿削除と投稿者特定及び法的措置の2つがあります。
投稿を削除する
前記のとおり、インターネット上の誹謗中傷・風評投稿の多くは匿名なので、投稿者自身へ削除は通常困難です。
そこで、プロバイダを相手に削除請求を行います。
削除請求には、裁判外の削除請求と裁判上の削除請求の2種類があります。
誹謗中傷・風評被害の被害拡大のためには迅速な削除が重要な場合が多いです。以下のリンクで詳しく解説していますので、ご参照ください。
投稿者を特定し、責任追及する。
匿名投稿の削除だけでは、投稿者は、SNSのサイト管理者からのペナルティを除き、責任追及されず、再度同様の投稿をする可能性があります。
そこで、投稿者を特定し、慰謝料を請求したり、同様の投稿をしない約束をさせたり、刑事罰を求めたりして、責任追及をするという手段があります。
投稿者を特定する
責任追及をする場合、まずは投稿者の特定が必要です。
投稿者につながる情報はプロバイダが保有している可能性があります。
コンテンツプロバイダ(投稿先のサイト管理者)は、投稿に関する情報(IPアドレスなど)や、投稿したアカウントの情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)を持っている可能性があります。
アクセスプロバイダ(投稿の通信が経由した通信網を持つプロバイダ)は、IPアドレスを使用した契約者情報(氏名、住所など)を特定できる可能性があります。
投稿者を特定するプロセスは複雑です。また、ログ保存期間の関係で迅速な対応が重要な場合が多いです。以下のリンクで詳しく解説していますので、ご参照ください。
特定した投稿者に対し、損害賠償(慰謝料)などを請求する
投稿者が特定できたら、損害賠償(慰謝料)請求をしたり、二度と同様の投稿をしない約束をさせたり、謝罪文を書かせたりするなど、民事上の責任を追及します。
基本的には、裁判外で交渉することから始め、交渉が決裂したら裁判手続で請求することになります。以下のリンクで詳しく解説していますので、ご参照ください。
特定した投稿者を刑事告訴する
投稿者が特定できたら、場合によっては、刑事上の責任を追及するため、刑事告訴を検討します。
刑事告訴をする場合は、警察署への相談から進めます。
なお、脅迫や業務妨害を内容とする投稿については、自ら投稿者の特定をする前に、警察署への相談を優先させるべき場合もあります。
以下のリンクで詳しく解説していますので、ご参照ください。
どうすればいいのか?
ここまで、インターネット上の誹謗中傷・風評被害の特徴を詳しく解説し、具体的な救済手段をご案内しました。
繰り返しになりますが、いずれの手段も迅速な対応が重要となる場合が多いです。お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。
ここからは、「どうすればいいのか?」について、一つの考え方を説明します。
その1 誹謗中傷・風評投稿が今も残っているか確認しましょう。
誹謗中傷・風評投稿を改めて確認するのは辛いことです。しかし、投稿の有無は、救済手段の選択に大きく影響します。
投稿が残っている場合
その2にお進みください。
投稿がなくなっていた場合
投稿削除は、もはやする必要がありません。
投稿者の特定は、お手元に投稿のPDFデータやスクリーンショット、印刷物が残っていなければ、難易度が上がります。発信者情報開示請求では、裁判所やプロバイダに対して問題投稿を特定して示す必要があるからです。ただし、対処可能な場合があります。是非お気軽にお問い合わせください。
その2 投稿を証拠化しましょう。【重要】
今投稿があっても、ご相談までに削除された場合は、投稿者の特定の難易度が上がります。投稿者の特定・責任追及を少しでもお考えの場合は、今すぐ、投稿のPDFデータ、スクリーンショット又は印刷物を確保しましょう。
パソコンで表示可能な場合は、ブラウザの印刷機能で、送信先(Chromeの場合)やプリンター(Edgeの場合)でPDFを選択し、「ヘッダーとフッター」にチェックしてURL(https://●●)が表示されるように出力します。
スマートフォンしかお手元にない場合はURLを全て表示させてスクリーンショットをするか、印刷をします。URLを表示させるため、アプリでなくブラウザを推奨します。
その3 何をしたいか検討しましょう。
投稿が残っている場合、まず投稿削除を目指すことが考えられます。社会的評価を低下させる名誉毀損的投稿や、被害者を傷つける名誉感情侵害的投稿などは、迅速な削除により被害を軽減できます。
投稿者の特定・責任追及に進むかどうかは、その効果だけでなく、費用、特定失敗のリスクなどの無視できないネガティブ要素を考慮のうえ、慎重に検討する必要があります。
脅迫や業務妨害にあたる投稿は、投稿削除や投稿者の特定を進める前に、警察への相談を優先させるべき場合があり得ます。
その4 お気軽に当職までご相談ください。
以上、「どうすればいいのか?」について、一つの考え方を説明しました。
繰り返しになりますが、お悩みになる前にご相談いただいた方がより良い解決につながる場合があります。
是非お気軽にお問い合わせください。
炎上の予防・炎上後の対応について
インターネット上の誹謗中傷・風評被害の特徴とリスクは、特定の話題の議論が異常に盛り上がりSNSなどでバッシングが行われる「炎上」という形でも顕在化します。
「炎上」を予防し、「炎上」してしまった場合に適切に対応することは、レピュテーションマネジメント上重要となります。